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プロトタイプ開発とは?メリット・デメリット、他の開発手法との違いを解説
目次
プロトタイプ開発とは、プロダクトの試作品である「プロトタイプ」を作成し、ユーザーやクライアントのフィードバックを受けながら完成を目指す開発手法です。完成品のイメージを共有しながら開発を進めていくため、発注側・開発側で認識のズレが生じることを防げます。
この記事では、そんなプロトタイプ開発の特徴や工程、他の開発手法との違いについて解説します。
プロトタイプ開発とは?
プロトタイプ開発とは、プロダクトのプロトタイプ(試作品)を作成し、プロトタイプに対するユーザーやクライアントのフィードバックをもとに仕様を決めていく開発手法です。エンジニアがプログラミングでプロトタイプを作成する方法のほか、デザイナーなどがデザインツールを使って作成する方法もあります。
プロトタイプ開発の特徴
プロトタイプ開発では、要件定義で大まかな仕様だけを決め、プロトタイプの検証、評価、改良を繰り返しながら詳細を詰めていくのが特徴です。ユーザーやクライアントのフィードバックをもとに修正にどのくらい時間を費やすかは、プロジェクトによって異なります。
ワイヤーフレーム、モックアップとの違い
プロトタイプとワイヤーフレーム、モックアップはいずれもプロダクトの試作品という点で共通していますが、それぞれに盛り込む内容や、使用する目的は異なります。
ワイヤーフレームは、情報設計やユーザー導線を検証するために作成する設計図です。線や枠、シンプルな図のみで構成されているため、詳細なデザインまで落とし込まれているモックアップや、デザインだけでなく簡易的な機能も実装されているプロトタイプとは異なります。
モックアップは、デザインを検証するために作成するプロダクトの見本です。ワイヤーフレームと異なり詳細なデザインが施されていますが、プロトタイプのように画面遷移やボタンアクションなどの機能は実装されていません。
プロトタイプ開発の種類
プロトタイプ開発には、「使い捨て型プロトタイプ開発」と「進化的プロトタイプ開発」の2種類の方法があります。作成したプロトタイプを本番環境での開発前に破棄するか、本番環境に流用するか、という点が主な違いです。
使い捨て型プロトタイプ開発(ラピッドプロトタイピング)
使い捨て型プロトタイプ開発(ラピッドプロトタイピング)は、プロダクトの仕様が決定したらプロトタイプを破棄し、本番環境で新しく開発する方法です。あくまで要求仕様を決定することが目的のプロトタイプであるため、ユーザーの目に触れるフロント画面のみを作成し、見え方や画面の遷移などを検証します。プロトタイプを破棄する前提であるため、低価格・短期間で作成できるのがメリットです。
進化的プロトタイプ開発(ブレッドボード・プロトタイピング)
進化的プロトタイプ開発(ブレッドボード・プロトタイピング)は、作成したプロトタイプを、要件定義後に本番環境へも活用する方法です。使い捨て型プロトタイプ開発と異なり、一度作成したプロトタイプに修正、改良を加えて完成を目指します。プロトタイプを本番環境に流用するため、本番開発工数を削減できるのがメリットです。
プロトタイプ開発と他の開発手法の違い
プロダクトを開発する手法はプロトタイプ開発の他にも数多くあります。ここでは、代表的な開発手法とプロトタイプ開発の違いを説明します。
アジャイル開発との違い
アジャイル開発は、開発工程を細かく区切り、その都度検証、評価、改良を行う手法です。検証、評価、改良を繰り返す点はプロトタイプ開発と同じですが、「プロトタイプを作成せず、本番環境で開発を進めていく」という点で異なります。
スパイラル開発との違い
スパイラル開発は、開発工程を機能ごとに区切って、重要な機能から開発を進めていく手法です。プロトタイプを作成して検証、評価、改良を繰り返す点はプロトタイプ開発と同じですが、スパイラル開発では一連の流れを機能ごとに区切って行います。
MVP(Minimum Viable Product)開発との違い
MVP開発は、必要最低限の機能を実装した段階でプロダクトをリリースし、市場に受け入れられるのか、ユーザーにとって価値があるのか検証する手法です。そして、検証で得た結果をもとに改良することで、プロダクトの品質を上げていきます。開発段階でユーザビリティテストを行うプロトタイプ開発と異なり、素早くリリースすることが特徴です。
プロトタイプ開発のメリット・デメリット
プロトタイプ開発の概要、他の開発手法との違いを踏まえたうえで、ここからはプロトタイプ開発のメリット・デメリットを解説します。これから開発するプロダクトにとって、プロトタイプ開発が最適な手法であるか検討してみましょう。
3つのメリット
プロトタイプ開発の主なメリットは以下の3点です。
- 完成イメージとのズレを早期解消しながら進められる
- リリース前からユーザーの意見を反映させた開発ができる
- 仕様変更や機能追加にも柔軟に対応できる
完成イメージとのズレを早期解消しながら進められる
プロトタイプ開発では、本番環境での開発前にプロトタイプを作成し、ユーザーやクライアントに共有します。そのため、発注側・開発側の認識のズレを早期解消でき、本番実装後の修正工数も削減できます。
リリース前からユーザーの意見を反映させた開発ができる
プロトタイプ開発は、リリース前からユーザーやクライアントからの意見をプロダクトへ反映できます。そのため、よりユーザーニーズに沿った仕様やデザインへブラッシュアップした状態でプロダクトをリリースすることが可能です。
仕様変更や機能追加にも柔軟に対応できる
プロトタイプ開発は、開発途中での仕様変更や機能追加を見越してスケジュール管理を行います。ユーザーやクライアントからの要望に柔軟に応えられるため、プロダクトが完成してから「この機能も追加したかった」「思っていた仕様と違った」というトラブルを避けられます。
3つのデメリット
プロトタイプ開発の主なメリットは以下の3点です。
- 開発にかかる費用が膨らみやすい
- 遅延して長期化するリスクがある
- 開発側の一定の技術力・開発経験が必要
開発にかかる費用が膨らみやすい
プロトタイプ開発は、ユーザーやクライアントからのフィードバックを反映させながら開発を進めていきます。そのため、他の開発手法と比べて工程数が増える傾向にあり、想定より手戻りが多いと開発費用が膨らんでしまうことも。
プロトタイプ開発を行う際は、できるだけ手戻りがないように要望やフィードバックを具体的に伝え、開発側と認識を揃えることが重要です。
遅延して長期化するリスクがある
プロトタイプ開発は、開発期間が長期化するリスクもあります。ユーザーやクライアントからの細かい要望に答えているうちに、遅延が生じてしまう可能性があるからです。また、大規模なプロジェクトの場合、関係者のフィードバックを得るために複雑なスケジュールを調整しなくてはいけません。
スケジュール通りにリリースできるよう、プロトタイプに反映させたい要望に優先順位をつけることや発注側の確認者の数を絞ることも検討してみましょう。
開発側の一定の技術力・開発経験が必要
プロトタイプ開発は他の開発手法より難易度が高く、開発側に一定の技術力や経験が求められます。プロトタイプの作成・改良を繰り返すため、開発側の負担が大きく、大幅な遅延や追加費用が発生するリスクもあります。
プロトタイプ開発を採用するのであれば、発注先の制作会社がプロトタイプ開発の実績があるか確認するのがおすすめです。
プロトタイプ開発の流れ・工程
次に、プロトタイプ開発の流れを説明します。
要件定義
他の開発手法と同様に要件定義を行いますが、プロトタイプ開発では「プロトタイプを作成できるだけの簡易的な内容」を決定します。機能や仕様を詳細に決めるのではなく、発注側・開発側で大まかなイメージを揃えることが目的です。
設計
要件定義が済んだら、技術的な設計要件を決めていきます。あくまでプロトタイプを作成するために必要な工程なため、厳密には行わず、スピード感を重視します。
プロトタイプ作成
設計をもとに、プロトタイプを作成します。作成する方法は、エンジニアがHTMLやCSSで作成するほか、デザイナーがFigmaやSketchなどのデザインツールを使って作成する方法もあります。プロトタイプではデザインも確認するため、いずれの場合もデザイナーによるデザインの落とし込みが必要です。
フィードバック・修正
作成したプロトタイプをユーザーやクライアントが試用し、フィードバックを行います。そして、フィードバックの内容に対して、開発側は改善や修正を行います。この流れを繰り返すことで、発注側と開発側のイメージを揃え、完成品に近づけていきます。
本番開発・リリース
フィードバックを受けて改善したプロトタイプをもとに、本番環境で開発を行います(進化的プロトタイプ開発の場合は、作成したプロトタイプを本番環境に流用)。細部の実装まで完了したら、いよいよプロダクトのリリースです。
プロトタイプ開発に適したプロジェクト
プロトタイプ開発は、開発前にプロトタイプを作成することで、発注側・開発側で完成品のイメージを合わせられるのが最大のメリットです。ここでは、そんなメリットを活かせるプロジェクトの例を3つ紹介します。
新規事業プロジェクト
新規事業のプロジェクトは、プロダクトの完成形がイメージしづらく、必要な機能や適しているデザインを把握できていない場合があります。そのため、要件定義・設計を大まかに行い、プロトタイプを使いながら詳細な仕様を決定していくプロトタイプ開発は、新規事業のプロジェクトに適しているといえます。
UIデザインを重視するプロジェクト
操作性やデザインは言葉で説明するのが難しく、人によって認識が異なってしまう場合があります。また、プロダクトが完成してからUIデザインを修正しようとすると、スケジュールの大幅な遅延や開発コストの膨大化は避けられません。しかしプロトタイプ開発であれば、発注側・発注側でUIデザインの認識がズレていないかこまめに確認できます。そのため、UIデザインを重視するプロジェクトでもスムーズに開発を進められるでしょう。
発注側のプロダクト開発経験が少ないプロジェクト
発注側の開発経験が少ないと、プロダクトの具体的な完成形を思い描いたり、開発側へ的確に要望を伝えたりすることは困難です。その場合は、プロトタイプを使いながら少しずつ仕様を決定していくプロトタイプ開発がおすすめです。開発経験が少なくても完成形のイメージを描きやすく、納得のいくプロダクトをリリースできるでしょう。
プロトタイプ開発で、ユーザーニーズを反映させたプロダクトに
プロトタイプ開発は、プロトタイプを作成し、検証、評価、改良を繰り返して完成を目指す開発手法です。開発段階でユーザーやクライアントがフィードバックを行うため、プロダクトのイメージが漠然としている新規事業や、UIデザインを重視するプロダクト、発注側の開発経験が少ない場合に適しています。
ただ、ユーザーニーズを正確に反映させたプロダクトを目指すには、プロトタイプ開発だけでなく、適切かつ効果的なフィードバックが得られるインタビューや、A/Bテストなどを活用したリリース後の運用改善が必要です。UX Design Labでは、プロトタイプの作成やユーザーインタビュー、ユーザビリティテストはもちろん、初期段階の戦略立案や本番開発に至るまで、一気通貫で事業立ち上げのサポートを行っております。
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