Column
新規事業提案のプレゼンに必須の要素9つ。資料作りのコツも解説
目次
新規事業の立ち上げは、多くのチャレンジと共に新しい価値を創出する魅力的なプロジェクトです。実現には社内関係者はもちろん、ステークホルダーや投資家などにその価値と可能性を伝えることが必要です。プレゼンテーション(以下、プレゼン)は、このコミュニケーションのカギとなるもの。効果的なプレゼンは新規事業の成功を左右するとも言えます。
この記事では、新規事業提案のプレゼンに必須の9つの要素、資料の作成時のポイントやコツもご紹介します。ビジョンの明確化から収益予測、リスク分析に至るまで、網羅的に取り組む内容を把握することで、アイディアや提案が確実に伝わるプレゼンを実現しましょう。
新規事業提案のプレゼンとは
新規事業提案のプレゼンの最大の目的は、ステークホルダー(経営陣・従業員・投資家など)に対して、提案する事業の価値と実現可能性を明確に提示することです。その意義は、新たな取り組みや事業展開が会社の将来の成長や競争力強化にどのように寄与するかを示す点にあります。
新規事業提案のプレゼンの目的と意義
提案する新規事業が持つ経済的な価値や競争力を明らかにし、必要な資源や支援を獲得することが、プレゼンの最も重要な目的です。また、新規事業が会社のミッションやビジョンにどのように適合し、それを実現するための手段としてどのような役割を果たすのかを伝えます。
このプレゼンを行うことで、組織内の異なる部署やステークホルダー間でのコミュニケーションの橋渡しができ、社のビジョンや方針を共有することもできます。これは組織全体の一体感を生み、新規事業へのコミットメントを高めるために欠かせません。
新規事業提案のプレゼンで求められること
単にアイディアやコンセプトを伝えるだけでは、新規事業提案のプレゼンとしては不十分と言えます。具体的かつ説得力のある内容とその実現に向けた戦略を伝える必要があります。
プレゼンで提示を求められる要素としては、事業の明確なビジョン、背景と課題の認識、市場分析や競合分析、ビジネスモデル、収益予測、実行戦略、リスク分析……など多岐にわたります。これらの要素を網羅し、緻密かつ具体的に伝えることで、聞き手に納得感を持ってもらい、支援や賛同を得られるよう尽力します。
新規事業提案プレゼンのステップ
新規事業の提案はアイディアを現実化するための計画や情熱、そしてそのアイディアに同意を得る説得力が必要です。このプロセスを確実に進めるため、各ステップで一貫性と構造を持ったプレゼンを行います。準備段階・発表段階・質疑応答、3つの段階ごとに重要な点を解説します。
準備段階
準備段階は、緻密な計画と綿密なリサーチによりプレゼンの成功への土台を築く基盤となるフェーズです。ここで行うのは、事業提案の核となる内容を明確にし、それをどう伝えるかの大枠を組み立てることです。ここでの徹底したリサーチと計画が、発表の信頼性と説得力を高めるポイントとなります。
実際の資料作成では、市場データや事業計画をわかりやすく可視化するグラフやチャート、事業の魅力を伝えるための写真やイラストなど、説得力を高めるための資料を準備できるとなおよいです。
発表段階
発表段階は、準備段階で作成した内容を実際に伝えるフェーズです。ここでポイントになるのは、内容の魅力を最大限に引き出すためのプレゼン技術です。情熱的なストーリーテリング、明確なデータの提示、そして視覚的な資料の活用など、聴衆の心に響く発表を心がけます。プレゼンの品質が、ステークホルダーや意思決定者たちの印象や評価に大きく影響するためです。
発表の際は自身のパッションや熱意を忘れずに伝えることにも力を注いでください。情熱的なプレゼンは、聞き手に感情的な共感を呼び起こし、提案への信頼や興味を高める助けとなります。全体を通して、明瞭で組織的な構造と、説得力のある内容が発表段階での成功を後押しします。
質疑応答段階
最後の質疑応答段階は、プレゼンの成果を左右する重要なフェーズです。提案内容や意図をより深く理解していただく機会として、しっかりとした対応が求められますので、重要なのは事前準備です。発表中に取り上げた内容に関する質問はもちろん、関連する範囲や予測される疑問点についての回答を事前に準備しておきます。データや裏付けを用意しておくことで、提案の確実性を伝えることができます。
とはいえ、難問に遭遇することもあります。その際は、「現時点での情報では回答が難しい」と正直に伝えます。後日詳細な回答をする意向を示し、誠実さをアピールします。
質疑応答は事業提案の真価が問われるフェーズです。抜かりのない対応で提案の価値と誠実さを伝え、プレゼンを成功させましょう。
新規事業提案のプレゼン9つの構成要素
新規事業の提案は、当然ながらアイディア以上のものが求められます。ここでは、新規事業提案のプレゼンにおいて欠かせない「9つの構成要素」を深掘りします。
全体の流れとしては、まず、アイディアの核となるビジョンや背景、解決したい課題を明確にすることからスタート。これが提案の土台となります。次に、そのアイディアが実際に受け入れられる市場が存在するかどうかを市場分析で検証。どんなビジネスモデルで収益を上げるのかを構築します。その上で、顧客としてのUX(顧客体験)を最適化し、収益予測を立てます。
もちろん、他の競合との差別化やリスクに対するアプローチも必要です。具体的な実行方法やスケジュールを設定し、事業の長期的な展望としてのロードマップを提示します。これらの要素が連動し、新規事業としての必要事項をまとめた提案が成立します。
1. ビジョン/背景/解決したい課題
「ビジョン/背景/解決したい課題」は、新規事業提案の核心となる部分です。これらが明確でなければ、プロジェクトの方向性がぼやけ、関係者を巻き込むこと自体が難しいものとなります。
- ビジョン
事業の最終的な目標や、達成したい大きな夢を示します。事業を進める上での羅針盤となり、プロジェクトメンバーやステークホルダーに方向性とモチベーションを提供します。 - 背景
そのビジョンを掲げる理由、事業を始めるタイミング、現在の市場状況など、プロジェクトを立ち上げる背景を説明します。これにより、なぜ今、この新規事業が必要なのかを伝えます。 - 解決したい課題
市場がもつユーザーの痛みやニーズ、既存のソリューションでは解決できていない問題点を提示します。これにより提案する新規事業の価値や必要性を理解しやすくなります。
これら3つの要素は新規事業の根幹となる部分です。ここをまず最初にしっかり伝えることで、提案の説得力を高めることができます。
2. 市場分析
市場分析を行うことで、ターゲットとする市場の現状や将来の成長性、また競合との位置関係などを明らかにします。また、市場のトレンドや消費者の行動変化を捉えることで、将来的な市場の変動や新たなビジネスチャンスを予見もできます。以下が市場分析の要点となる項目です。
- 市場規模
対象となる市場の現在の規模や将来の成長予測。事業のポテンシャルや投資価値を評価する基礎となります。 - 顧客セグメンテーション
市場を構成する顧客群の特性やニーズ、購買行動などを分析して、どのセグメントに焦点を当てるかを決定します。 - 競合分析
市場に存在する競合企業や製品の特性、市場占有率、強み・弱みを評価し、自社の位置付けを明確にします。 - 市場トレンド
技術革新、消費者の価値観の変化、規制の動向など、市場に影響する外部の動きを捉えます。
市場分析は事業提案の根拠や基盤となるデータとなりますし、戦略策定の方向性を示す要素です。事業提案の説得力と実現可能性を理解してもらうために、とくに重要なステップとなります。
3. ビジネスモデル
ビジネスモデルは事業の収益を生み出す仕組みのことです。中心に位置するのは価値提案であり、顧客に提供する自社ならではの価値や解決策でもあります。この価値をどの顧客層に、どんな方法やチャネルで提供するかがビジネスモデルのカギとなります。さらに、どう収益を上げるかの収益構造、たとえば製品販売やサブスクモデル、広告モデルなどの方法を設計します。
また、事業を支える活動に必要な人材やリソース、外部企業のパートナーシップが必要かどうかも併せて考慮します。これらすべての要素を適切に組み合わせ、持続的な成功へと導く戦略を組み立てるのが、ビジネスモデルの肝となります。つまり、下記についてわかりやすくまとめられていると、関係者の理解を得やすくなります。
- 価値提案
事業が提供する製品やサービスの中核となる価値。顧客のどのようなニーズや問題点を解決するのかを示します。 - 顧客セグメント
主要なターゲットとなる顧客層やマーケットを特定します。 - 収益の流れ
どのようにして収益を上げるのか。たとえば、販売、サブスクリプション、広告などの販売モデルを提示します。 - コスト構造
固定費・変動費・初期投資など、事業運営における主要なコスト。
4. UX(顧客体験)
UX(ユーザーエクスペリエンス)は製品やサービスを利用するユーザーが体験する感情や印象全体のことを指します。とくに新規事業の提案においては、このUXの品質がその事業の成功を大きく左右します。良好なUXは顧客の信頼や満足度を高め、継続的な利用や口コミによる拡散を促進させることができます。以下がUXの重要性と考慮点です。
- ユーザー中心のデザイン
ユーザーの要望やニーズを正確に理解し、それを基盤として製品やサービスを設計します。 - 使いやすさの追求
直感的で使いやすいインターフェースの提供は、ユーザーの満足度を大きく左右します。デジタルサービスの場合、操作の煩雑さや不具合はユーザーの離脱を引き起こす原因となりますので、とくに配慮が必要です。 - 感情のデザイン
ユーザーが製品やサービスを使用する際の喜びや驚きなど、ポジティブな感情を引き出す体験の設計も重要です。
提案では、良好なUXを実現するための具体的な施策や計画を示すことが求められますので、事業がターゲットとする顧客層にとって魅力的であること、そしてその事業が持続可能であることを伝えることに努めます。
5. 収益予測
収益予測は、新規事業がどれくらい収益を生み出す可能性があるかを示すものです。プレゼンでは、収益予測は非常に重要な要素となり、ステークホルダーや投資家が投資の意義やリスクを評価する際の基盤となる情報になります。収益予測を行う際に必要とされる情報は、以下のとおりです。
- 市場規模
対象となる市場の全体的な規模や成長率を調査し、事業が取得可能な市場シェアを推定します。 - 価格設定
提供する商品やサービスの価格を決定し、それに基づいて収益の大枠を計算します。 - 販売量の予測
マーケティング戦略や販売チャネルを考慮し、予想される販売量を計算します。 - 固定費と変動費
事業運営の費用を詳細に洗い出し、これに基づいて利益を予測します。
収益予測は事業の成功を左右するため、過度に楽観的な数字を提示すると信頼性を失い、逆に慎重過ぎると事業の魅力を伝えられないリスクもあります。現実的かつ実現可能な収益予測を心がけてください。
6. 競合分析
新規事業が参入する市場において、どの企業やブランドが競合として存在するか、また、競合と自社事業がどんな位置付けになるのかの分析は当然欠かせません。プレゼンに取り入れることで、聴衆に対して市場環境の深い理解を促すことができます。競合分析を行うおもなポイントは以下の通りです。
- 競合の特定
同じターゲット層を持ち、同じニーズを満たす企業やブランドを特定します。 - 強み・弱みの分析
競合各社の商品やサービスの特長、ブランドイメージ、価格設定などを比較し、自社の強みや弱みを明らかにします。 - 市場シェアの推定
競合各社の市場占有率や成長率を調査し、市場の動向や自社の位置を把握します。 - 競合戦略の予測
競合が今後採る可能性のある戦略や動きを予測し、それに対する対策を検討します。
市場における独自性や競争力を明確に伝えるため、この分析はプレゼンにおいて非常に重要な項目です。
7. リスク分析
事業提案を進める上で、潜在的なリスクや課題を認識しておく必要があります。リスク分析は、提案された事業が直面する可能性のある困難や障壁、それに伴う影響を把握し、対策や回避策を練るプロセスです。たとえば、技術的なハードル、競合の動き、市場の変動、法制度の変更、資金調達の困難さなどが考慮ポイントとなります。
また、リスクを指摘するだけでなく、どう対処するか、またはリスクを最小化するための策略を示すことも必要です。これにより、提案が現実的で実行可能であることを示しながら、計画的に事業を進める備えができていることも同時に伝えられます。
リスク分析は、ステークホルダーや投資家にとって、事業提案の真剣さと誠実さを感じる要素の一つです。逆に言えば、リスクを顧みずに楽観的なビジョンだけを語る提案は、信頼性に欠けると見なされると言ってもいいでしょう。
8. 実行方法/スケジュール
新規事業を実現化する手法や進め方、スケジュールがなければ、実現性が低いとみなされます。ここで取り上げる「実行方法/スケジュール」は、その具体化する道筋を示すものです。
- 実行方法
事業の目的を達成する手順や戦略を示します。ここでは、技術的なアプローチ、人材やリソースの配置、連携したいパートナーやツール選定など、プロジェクトを成功に導くための具体的な手法を網羅します。 - スケジュール
実行方法を時間軸に沿ってどう進めていくかを示します。重要なマイルストーン、期間別のタスクと期限、さらに各フェーズの開始と完了のタイミングなどを記載すると、プロジェクトの進捗管理がしやすく、関係者とのコミュニケーションもスムーズに行いやすくなります。
これらを示すと、提案を検討するステークホルダーや投資家が実現の可能性を判断しやすくなります。
9. ロードマップ(将来構想)
プレゼンにおける「ロードマップ」は、事業の将来的な展開や成長を示す方向性を表現するツールとして非常に重要度が高いものです。短期的なタスクやマイルストーンだけでなく、中長期的なビジョンや目標も視覚的に伝えることができます。
ロードマップには、事業が始まってからの成長フェーズや拡大戦略、新たな市場進出、製品やサービスのアップデート予定、技術的な革新やパートナーシップの形成など、具体的なタイムラインに沿った展望を示します。また、チームメンバーや関連部門と連携をとるためのガイドラインとしても利用できます。全体の方向性や優先順位が明確になると、組織全体の取り組みやリソースの配分を効果的に行う助けになります。
新規事業提案プレゼン、3つのコツ
新規事業提案のプレゼンをするにあたって必要な情報をここまで解説してきました。しかし、これらを掲載すればよいプレゼンになるというわけではありません。最後に大切なのは、プレゼンで聴衆の心をつかむことです。
その物語を魅力的に、そして説得力を持って伝えるには、ストーリー性を持たせる、データや数字を用いながら提案の背景や必要性を客観的に示し、信頼感を醸成することが必要です。その際、ビジュアルを工夫することで、単なるデータや事実を、聴衆の心に直接訴えかけるエモーショナルなメッセージにすることもできます。物語を魅力的に、そして説得力を持って伝えるために3つのコツをご紹介します。
ストーリー性を持たせる
ストーリー性を持たせるには、単なる事実やデータの羅列ではなく、情報を物語のように組み立て、プレゼンを聴いている人々に感情的な共感や興味を引き出す手法です。人は、数字や固定された情報よりもストーリーに引き込まれやすいとされています。なぜなら、物語は人々の感情や経験と結びつきやすく、より深く情報を記憶するのに役立つからです。
ストーリー性を持たせるためには始まりと終わりを明確にし、その間に起承転結の流れを作ります。流れがあることで、聴衆は内容に没頭しやすくなります。
- 始まり(序章)
現状の問題点を「始まり」として提示。 - 起
問題に取り組む動機や背景を示す。 - 承
解決策や提案内容を示す。 - 転
結果や未来のビジョンを示す。 - 結
まとめや結論を示す。
データや数字を活用する
プレゼンの中で事実や根拠を具体的、かつ客観的に示すのがデータです。データは、抽象的な言葉よりも具体的で信憑性があり、聴衆の認識や納得を促します。
たとえば、市場の大きさ、ターゲット層の人数、将来の収益予測などの数字を示すことで、提案の現実性や価値を具体的に伝えることができますし、競合他社との比較データや、実施したアンケート結果などを用いると、なぜ自社の提案が優れているのかを説明する材料として活用できます。
データや数字を活用する注意点として、出典の明記、データの正確性、そして過度な情報の詰め込みを避けることが挙げられます。誤ったデータや不正確な数字は、信頼性の喪失や誤解を生む原因になりますので注意が必要です。また、多くのデータを一度に提示すると、聴衆が混乱する可能性があるため、必要以上に情報を詰め込まず、優先度の高い重要なデータを選んで提示します。
ビジュアルを工夫する
プレゼンの視覚的要素を最大限に活用して、情報の伝達を効果的に行いたいのが、ビジュアルの工夫です。視覚は人間の情報取得の主要な経路であり、色彩や形、配置などの要素は受け手の認識や理解を大きく左右します。新規事業提案の際、単に文字だけのスライドや図表だけを提示するより、ビジュアルをうまく取り入れることで、聴衆の注目を引きやすくなります。たとえば、インフォグラフィックを用いてデータを視覚化したり、関連する写真やイラストを用いることで、抽象的な内容を具体的にイメージしやすくすることもできます。
工夫のポイントは、無闇に色彩や動きを多用せず、必要な情報を絞って伝えることです。また、使用する色やデザインがブランドやテーマに合致しているかを確認した上で、聴衆の文化や背景を考慮した選択をしたいところです。
新規事業成功の鍵は、UXに
新規事業の成功への道は、顧客の実際の経験やニーズに真摯に向き合うことにあります。その中心にあるのが「UX(ユーザーエクスペリエンス)」です。UXの考え方は、顧客の心の声を直接捉え、それを製品やサービスの改善に生かすためのアプローチです。技術や戦略だけでなく、感情や感覚に訴えかける点で、UXは事業の成功を左右する要因となり得ます。多くの選択肢があるなかでユーザーに選ばれるには、ユーザーエクスペリエンスの最適化が欠かせません。
高品質なUXを実現するためには専門的な知識やスキルが要求されます。UX Design Labはあなたの事業を次のレベルへと導く専門家集団として、最適なUXデザインの提供をサポートしています。私たちと一緒に顧客の心をつかむ新規事業の実現を目指しませんか。
新規事業開発パートナーの3つの種類と選定ポイントの資料をダウンロード
UX Design Labの詳細はこちら
UX Design Labのお問い合わせはこちら
UXデザインで課題を発見・分析・改善
事業の成功まで伴走するパートナーとなります。