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新規事業助成金・補助金を活用するメリットとは?種類や申請の注意点も解説
目次
資金調達は、新規事業を立ち上げるときに直面するおおきな課題。多額の費用がかかるため、必要費用を自己資金だけでまかなえるとは限りません。そこで役立つのが、新規事業助成金・補助金です。
この記事では、新規事業に必要な費用の目安と、企業規模や目的に応じた新規事業助成金・補助金の種類を紹介します。申請時の注意点についても解説しているため、新規事業にかかる負担を軽減したいと考えている方はぜひご覧ください。
新規事業にかかる費用の目安
新規事業の立ち上げには、プロダクトの開発費のほか、人件費や広告費などさまざまな費用がかかります。では、具体的に新規事業にはどのくらいの費用が必要なのでしょうか?
2021年11月に福井県商工会議所連合会が実施した「新型コロナウイルス感染症を契機とした新事業展開に関する調査」によると、新事業展開にあたり必要となった投資額について、従業員数が5名以下の事業所における最多回答は100万円未満、従業員数300名以上の事業所では6,000万円以上でした。
また、2022年4月に東京商工会議所が実施した「創業・スタートアップ実態調査」によると、業歴10年未満の中小企業者が創業当初3年間に「新製品・新サービス開発などに投資した金額」は、100万円以上500万円以下が最多回答でした。
これらのデータからわかるように、新規事業を立ち上げるためには、少なくとも数百万円から数千万円程度の資金が必要だと考えられます。しかし、中小企業やベンチャー企業にとっては、これだけの資金を自己資本で捻出することは困難でしょう。
そのため、助成金や補助金を活用することが、新規事業立ち上げにおける資金調達の有効な手段となるのです。
新規事業助成金・補助金を活用するメリット
ここでは、新規事業助成金・補助金を活用するメリットを3つ紹介します。
返済の必要がない
新規事業助成金・補助金の最大のメリットは、返済の必要がないこと。「支給されるお金」であるため金利や手数料もかからず、新規事業にかかるコストを抑えられます。万が一、新規事業で失敗した場合も借入れの返済に苦しむことがないため、金銭面での不安を軽減させた状態で新規事業にチャレンジできるでしょう。
社会的な信用が上がる
新規事業助成金・補助金を受給できれば、社会的な信用を上げることができます。
助成金・補助金を受給するためには、それぞれの運営団体による審査を通過しなければいけません。この審査では、事業計画書やビジネスモデル、市場分析などを通して事業の妥当性や実現可能性が評価されます。そのため、新規事業助成金・補助金を受給できた=事業の価値や将来性が認められた証となるのです。
事業拡大などの理由でのちに銀行から融資を受ける際も、受給実績があれば、融資条件が有利になったり融資額が増えたりする可能性が高まります。
また、新規事業助成金・補助金の受給実績は、顧客やパートナー企業といった外部のステークホルダーに対してもアピールできます。「社外から評価されている」というメッセージを通して、自社のブランドイメージや信頼度を高められるでしょう。
事業計画に関する客観的な意見が聞ける
事業計画に関する客観的な意見を聞くことができるのも、新規事業助成金・補助金を申請するメリットです。
前述したとおり、新規事業助成金・補助金を受給するためには審査を通過する必要があります。この審査では、運営団体や外部の評価委員が新規事業の目的、内容、市場性、技術的な優位性、財務計画などを厳しくチェックするため、客観的な視点で新規事業の問題点や改善点を発見できる貴重な機会となるのです。
また、新規事業助成金・補助金の審査に通過したあとも、定期的な進捗報告が必要になる場合があります。これも、新規事業の改善につながる客観的なフィードバックを得られる機会です。
新規事業助成金・補助金の種類
ここからは、新規事業に活用できる助成金・補助金を7つ紹介します。それぞれ特徴や受給条件が異なるため、自社に適した種類はどれか判断してみてください。
創業助成金
申請条件 |
など |
助成対象期間 | 交付決定日から6ヶ月以上2年以下 |
助成額 | 100万円〜300万円 |
「創業助成金」とは、都内で創業を予定している方、または創業して5年未満の中小企業者などの方のうち、一定の要件を満たす方に対象経費の3分の2を助成する制度です。
この制度で注意しなければいけないのは、“創業支援事業を利用していること”という申請条件を満たすまでにおおむね2ヶ月以上かかること。具体的には、「事業計画書策定支援の終了」や「アクセラレーションプログラムの受講」など、19ある要件のうち1つを満たす必要があり、いずれもおおむね2ヶ月以上の期間がかかるのです。申請をする際は、スケジュールに余裕を持って申請準備をするようにしましょう。
地域中小企業応援ファンド
申請条件 | ファンドによる |
助成対象期間 | ファンドによる |
助成額 | ファンドによる |
「地域中小企業応援ファンド」とは、地方創生や地域経済の活性化に貢献する新規事業に取り組む中小企業に対して、助成を行う制度です。全国に31の応援ファンドがあるため、地方の企業にとっても申請しやすい制度といえるでしょう。助成上限額や助成率、対象経費はファンドによって異なるため、申請する前に条件を確認することが大切です。
事業再構築補助金
申請条件 | 全枠共通必須要件
【成長枠】
【産業構造転換枠】 以下のいずれかを満たすこと
|
助成対象期間 | 【成長枠、産業構造転換枠】 交付決定日〜12ヶ月以内 |
助成額 | 【成長枠、産業構造転換枠】
|
新型コロナウイルスの影響で売上が減少したり、事業継続が困難になったりした中小・中堅企業を対象に、事業再構築のための資金を支援するのが事業再構築補助金です。補助金の活用目的に応じて細かい違いはありますが、中小企業は対象経費の2分の1が、中堅企業は3分の1が補助されます。事業再構築補助金では、再構築する事業の成長率などが申請条件として具体的に設定されているため、市場規模などを踏まえた再現性のある事業計画の立案が必要だといえるでしょう。
IT導入補助金
申請条件 | 【通常枠】
など 【デジタル化基盤導入枠】
など |
助成対象期間 | ー |
助成額 | 【通常枠】
※A類型の場合 【デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型 )】
※ITツールを導入する場合 |
IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者がITツールやシステムを導入する際に、その費用の一部を国が補助する制度です。導入する製品の種類によって、対象経費の2分の1〜4分の3の費用が補助されます。
また、申請を受ける過程で「みらデジ経営チェック」(経営課題やデジタル化に対する取り組み状況のチェック)や専門家への相談を実施するため、申請準備をする中で自社の経営課題を明らかにできます。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
申請条件 | 基本要件
【グローバル市場開拓枠】 以下のいずれか一つの類型の各条件を満たす投資であること
→国内事業と海外事業の双方を一体的に強化し、グローバルな製品・サービスの開発・提供体制を構築することで、国内拠点の生産性を高めるための事業であること など
→国内に補助事業実施場所を有し、製品などの最終販売先の2分の1以上が海外顧客となり、計画期間中の補助事業の売上累計額が補助額を上回る事業計画を有していること など
→応募申請時に、具体的な想定顧客がわかるインバウンド市場調査報告書、実績報告時に、プロトタイプの仮説検証の報告書を追加提出すること など |
助成対象期間 | 【通常枠】
【グローバル市場開拓枠】
|
助成額 | 【通常枠】
【グローバル市場開拓枠】
|
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金とは、中小企業・小規模事業者などが今後直面するであろう制度変更に対応するために、サービス開発や生産プロセスの改善を支援する制度です。通常枠/回復型賃上げ・雇用拡大枠/デジタル枠/グリーン枠/グローバル市場開拓枠の5つの枠が用意されており、今後注力する領域に合わせたものを選択できます。応募は年に3回ほど行われているため、新規事業立ち上げのスケジュールにあわせて活用できる補助金です。
JAPANブランド育成支援事業
申請条件 |
など |
助成対象期間 | 10月以降〜翌年3月 |
助成額 | (下限なし)〜500万円 |
JAPANブランド育成支援事業とは、海外向けの商品開発やサービス提供を行っている事業者を対象に、対象経費の2/3ほどを支援する制度です。特筆すべき点は、補助金の申請にあたり「支援パートナー」をつけられること。中小企業庁が海外販路開拓のプロフェッショナルとして選定した事業者の中からパートナーを選択し、事業計画策定などを支援してもらうことができるのです。海外での商品・サービス展開を行ったことがない方でも、安心して利用できる制度だといえるでしょう。
TOKYO戦略的イノベーション促進事業
申請条件 |
など |
助成対象期間 | 2024年1月1日〜(最長)2026年12月31日 ※令和5年度の場合 |
助成額 | (下限なし)〜8,000万円 |
TOKYO戦略的イノベーション促進事業は、東京都内で新規事業を展開する中小企業やベンチャー企業の支援を目的とした事業。インフラメンテナンスや医療・健康など、都のイノベーションマップに記載のある開発支援テーマに取り組んでいる事業者が対象です。
この制度では、最大8,000万円の助成を受けられるだけでなく、技術開発や販路開拓の支援、事業完了後のアフターフォローなどを受けられます。また、技術開発に伴う環境の変化に対応するため、申請時の開発計画を柔軟に変更することも可能。大企業に比べて経済的な基盤が整っていないベンチャーやスタートアップ企業にとって、活用しやすい助成金制度となっています。
新規事業助成金・補助金を申請する際の注意点
ここでは、新規事業助成金・補助金を申請する際の注意点を3つ紹介します。
必ず受給できるとは限らない
新規事業助成金・補助金は、必ず受給できるとは限りません。新規事業助成金・補助金を受給するには、受給条件を満たし、運営団体の審査を通過する必要があるからです。審査では事業計画の妥当性や実現可能性などが評価されるため、審査員にビジネスの魅力が伝わるよう、資料で事業の強みをアピールしましょう。
また、新規事業助成金・補助金のなかには予算が決まっているものも存在するため、人気の高い助成金は予算枠が埋まってしまい、受給を受けられない場合もあります。そのため、助成金・補助金は、受給枠や審査スケジュールなどを確認し、余裕を持って申請することが大切です。
助成金の申請には時間がかかる
新規事業助成金・補助金の申請には、時間がかかることも注意すべきポイントの一つ。細かいフローは種類によって異なりますが、新規事業助成金・補助金の申請にはさまざまな書類や手続きが必要です。とくに提出書類は、事業の妥当性や実現可能性を判断するために重要なもの。ただ記入するのではなく、審査員の目に留まるよう丁寧に作成する必要があります。
他にも、新規事業助成金・補助金の対象となる支出がそれぞれ異なるため、情報収集や申請額の把握も欠かせません。自社にとってどの制度が適しているのかよく検討し、申請期限に間に合うよう、余裕を持って申請準備を進めましょう。
基本的に後払いのため、一時的に支出が発生する
種類によって細かい違いはあるものの、新規事業助成金・補助金は基本的に後払い制のため、一時的な支出が発生することも押さえておきましょう。これは、補助対象となる費用が発生したことを確認してから受給されるためです。
もし、新規事業助成金・補助金の受給に先立つ一時的な支出を予算で賄えない場合、会社のキャッシュフローに影響が出てしまうかもしれません。新規事業助成金・補助金を申請する際は、必ず支払いスケジュールを把握し、一時的な支出ができる分の資金を確保しておくようにしましょう。
新規事業助成金・補助金を活用して、資金面の不安を解消しよう
新規事業助成金・補助金は、返済の必要がなく、申請を通して事業計画に関する客観的な意見が聞ける点がおおきなメリットです。また、事業再構築補助金やIT導入補助金など、新規事業助成金・補助金は企業規模や目的に応じてさまざまな種類があります。申請する際は、それぞれの申請期限や審査スケジュールを把握し、余裕を持って準備をしましょう。
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