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新規事業開発のヒアリングで失敗しない! 実施方法やコツを解説
目次
新規事業開発に取り組む際、市場や顧客からの直接の声をキャッチするヒアリングは極めて重要なステップとなります。ヒアリングを正確に行い、得られた情報を活用することで、事業の成功率を大きく上げる可能性が高まります。
ヒアリングは単に質問をすることではありません。事前に準備し、対話の方法、後処理まで、精緻なプロセスを経て初めて、その真価が発揮されます。うまくできれば市場のニーズや顧客の要望を深く理解し、競合他社と差別化された新規事業を立ち上げるヒントを得ることができます。
本記事では、新規事業開発におけるヒアリングの目的から実施方法、さらに成功のためのポイントまで解説します。
新規事業開発におけるヒアリングの目的
ヒアリングは事業計画の方向性を正確に定める手段のひとつです。以下は、新規事業開発におけるヒアリングの主要な目的を挙げます。
- 市場ニーズの深堀り
新規事業を成功させるために市場ニーズを正確に理解することが欠かせません。ヒアリングを通じて、消費者や関連業界のプレイヤーからの生の声やフィードバックを収集し、市場の動向やトレンドを掴みます。 - 顧客の期待や課題の把握
直接顧客や利用者からの意見やフィードバックを集め、彼らの期待や課題、疑問点、懸念事項を具体的に知ることができます。これにより、商品やサービスの改善点や新たな付加価値を発見することが可能となります。 - 競合他社との差別化
競合他社の商品やサービスと、どのように差別化を図るかは、新規事業の成功のカギとなります。ヒアリングを通じて、他社の商品やサービスに対する評価や改善点を集め、自社の事業計画に反映し、競合他社と差別化する方向性を模索します。 - 新規事業のリスク低減
ヒアリングを行うことで事業計画の不確実性やリスクを早めに特定し、対策を講じます。
ヒアリングを実施するメリット
新規事業開発におけるヒアリングの実施は、事業の成功確率を大きく上げるために欠かせません。以下は、ヒアリングを実施することで得られるおもなメリットを詳しく解説します。
- リアルタイムの市場情報の取得
現在の市場の動向、顧客のニーズや行動パターン、競合状況などのリアルタイムの情報を集めることができます。新規事業開発の方向性を定める上で非常に価値が高い情報となります。 - 顧客との関係構築
ヒアリングは企業と顧客との間に信頼関係を築くための良い機会にもなります。顧客の声を直接聞くことで、顧客との距離を縮めることができます。 - ミスマッチの早期発見と対策
ヒアリングを行うことで新規事業計画における認識のミスマッチや誤解を早期に発見できます。これにより、計画の修正や改善を迅速に行うことができ、事業のリスクを低減できます。 - 新たなビジネスチャンスの発見
ヒアリングを進めるなかで、ときに想定外の顧客ニーズや市場のニッチな領域を発見することがあります。これらの情報は、新たなビジネスチャンスや事業展開のヒントになることもあります。
総じて、ヒアリングは新規事業開発の成功を導くための有効な手段であるとご理解いただけたと思います。適切な方法で実施し、多くのメリットを享受することができるようしっかり取り組みます。
ヒアリングの実施方法7ステップ
効果的なヒアリングを実施するには、計画的で体系的なアプローチが必要となります。ここでは事前の準備から実施、結果の分析までの一貫したフローを「ヒアリングの実施方法7ステップ」として解説します。
これらのステップを踏むことで、市場の真のニーズを掴み、新規事業の方向性をより明確にするための貴重な情報を得ることができるでしょう。ヒアリングの実施方法のポイントをつかみ、新規事業開発の成功にしっかりと繋げてください。
ステップ1.ヒアリング対象者を設定
最も重要なのは、「誰に聞くのか?」を明確にすることです。ヒアリング対象者の選定は、収集する情報の質や有用性を大きく左右します。
- 目的の明確化
ヒアリングの目的を明確にしましょう。たとえば、新製品の需要を調査したい場合、ターゲットとなる顧客層や製品を使用するシーンを具体的にイメージすることが必要です。 - 代表的な顧客層の選定
新規事業や製品のターゲットとなる顧客層を特定し、それらの層から代表的な対象者を選定します。若年層をターゲットにした商品の場合、20代~30代の男女を対象とし、具体的な数人に絞り込むことが重要です。 - ステークホルダーの考慮
顧客のほかにも、新規事業に関わる他のステークホルダーをヒアリング対象に加えます。取引先、業界の専門家、関連する公的機関など、様々な視点からの情報収集を行うことで、多角的に物事を判断できる材料とします。
ヒアリングには、情報の質と多様性を確保するためのバランスが重要です。適切な対象者を選定し、実際の市場の声を正確に掴めるよう配慮します。
ステップ2.ヒアリング項目を整理
ヒアリングの効果を最大限に引き出すためには、どのような情報を取得したいのかインタビュー項目を事前に洗い出します。
- 情報をカテゴリー分けする
ヒアリングしたい内容を大まかなカテゴリーに分けてみます。たとえば「製品の使用感」「価格に対する印象」「購入動機」など、目的に応じて分類します。 - 質問項目を洗い出す
カテゴリーごとに、具体的な質問項目をリストアップします。たとえば「製品の使用感」なら、「どの部分が使いやすかったか」「何か不便に感じる部分はあるか」など。 - オープンクエッションも準備する
具体的な質問のみに絞ってしまうと、予期しない意見や感想を逃す可能性があります。時間や必須項目のバランスを見ながら、対象者が自由に答えられるオープンクエッションも組み込むことで、自由な意見を引き出すこともできます。 - 質問項目の優先度を決める
時間や状況に応じて質問項目調整の必要が出てくることもあります。ヒアリングしたい情報の優先度を決めておくと、聞き逃しのないよう状況に合わせて対処できます。
ヒアリング項目の整理は、ただ質問を並べるだけではなく、目的に合わせたアプローチや優先度の調整が必要です。事前準備を念入りに行うことで、次のステップに活かせる回答を集めることができます。
ステップ3.ヒアリングシートの作成
ヒアリングをスムーズに進め、情報を漏らさず記録するためにヒアリングシートを準備します。
- 基本情報の欄を設ける
対象者の名前、年齢、職業、ヒアリング日時などの基本情報の記入欄を設けます。後で情報を整理・分析する際の必須項目となります。 - 質問項目のリストアップ
前のステップで整理したヒアリング項目をシートに記載します。質問の並び順やカテゴリーごとの区分けも忘れずに行います。 - 選択式の回答欄も用途に応じて設ける
評価を求める項目に関しては、選択式の回答欄を設けます。対象者は迅速に回答できますし、あとで統計データとしても使用できます。 - フリーメモ欄を設ける
ヒアリング時、対象者による予期せぬ発言や、質問項目外に重要な発言が出た場合にメモできるスペースを設けます。これにより、ヒアリング中の臨機応変な状況にも対応できます。
項目の検討とシート作成には十分な時間を割き、抜け漏れやヒアリング当日に書きたいことが書けないような事態が起こらないよう、確認します。
ステップ4.ヒアリングの流れを台本化
ヒアリングの成功は、事前準備にかかっています。流れを台本化すると、スムーズな進行と、対象者がリラックスした状態で回答できるよう環境を整えやすくなります。
- イントロダクションの設定
ヒアリング開始時に、簡潔に今回の目的と期待する結果を説明します。対象者がヒアリングの背景や意義を理解することで、より具体的で有意義な回答を引き出せる可能性が高まります。 - 回答しやすい質問から始める
質問の順番は、対象者が堪えやすいよう十分に配慮します。一般的には、比較的回答しやすい質問から始め、徐々に深掘りすると話しやすいと言われています。 - 時間を守る
約束した時間をオーバーしないようヒアリングにかける時間を事前に提示にし、時間を守るよう努力します。やむを得ず時間オーバーしてしまう場合は、時間切れになる前にその旨を伝え、了承を得るようにします。 - 終了時にフィードバックをもらう
ヒアリングの最後に、対象者からプロセスに関するフィードバックを依頼します。これにより、思わぬ感想が出たり、今回のヒアリングに関する反省点やヒントを得られることもあります。
ヒアリングを台本化することで、一貫した流れで効率的な進行ができ、対象者の不安を減少させる効果も期待できます。ヒアリングの質を高めることができるので、ぜひ取り組んでください。
ステップ5.当日ヒアリングの実施
ヒアリング当日は、ここまでの準備が実を結ぶ日です。計画に基づきながらも、臨機応変に対応し、想定以上の内容を得られるよう力を尽くします。
- 場の設定
ヒアリングの場を心地よく設定します。対象者がリラックスし、心地よく話すための前提条件は、騒音の少ない部屋、適切な温度や照明、清潔な環境であることです。 - ヒアリング開始
最初にヒアリングの目的や流れを再確認し、対象者の不安や疑問を払拭します。参加に対する感謝の意を伝え、話しやすい雰囲気を作る努力をします。 - 主体的に話を引き出す
台本に従いながら、対象者の反応を注意深く観察しながら進めます。必要に応じて質問の順序を変更したり、深掘りも行います。 - 話の腰を折らない
対象者が話している間は、彼らの意見や感想を尊重し、話を中断しないよう心がけます。質問や確認が必要な場合は、話が一段落した後に行います。 - メモを取る
ヒアリングシートを活用しながら、対象者の回答やコメント、表情や身振り手振りなどの非言語的な反応もできるだけ記録します。 - ヒアリング終了
すべてを終える前に、ここまでのおもなポイントを要約し、対象者に内容の確認を取ります。最後に、参加に対する感謝の意を伝え、今回のヒアリングに対するフィードバックを求めます。今後の改善点を探るきっかけを得るためです。
よりよいヒアリングは、対象者との信頼関係の上に成り立っています。スムーズな進行と、細やかな気配りにより、対象者からの有益なエピソードを最大限に引き出せるよう心がけましょう。
ステップ6.ヒアリング結果のサマリシートを作成
ヒアリングを終えた後は、集めた情報を有効活用するために整理と可視化を行います。
- 重要情報をピックアップ
ヒアリング中に収集したメモや記録から、とくに注目したいポイントや新たな気づきをハイライト(強調)します。大量の情報のなかでも、重要な部分を迅速に把握しやすくなります。 - カテゴリ分けをする
得られた情報をテーマや関連性に基づいてカテゴリ分けします。似たような意見や要望を一括して分析・考察しやすくなります。 - グラフや図を活用して整理
数値データや頻出する意見は、グラフや図を使用して可視化します。傾向やパターンを直感的に捉えられるようになり、情報の共有やプレゼンテーションにも役立ちます。 - アクションアイテムの洗い出し
サマリシートには、ヒアリングから得られた具体的な提案や改善点をアクションアイテムとしてリストアップします。このことで、次のステップやタスク設定がスムーズになります。
サマリシートは、ヒアリングで得た情報を組織やチームで共有し、今後の戦略立案や意思決定に活かせる重要ツールとなります。できるだけ早くチームに共有できるよう、簡潔にまとめます。
ステップ7.新たな仮説やアイディアを模索
ヒアリング結果をシートにまとめたら、その情報を基に新しい仮説やアイディアの検討を行います。
- ヒアリング結果を再評価する
サマリシートを元に、ヒアリングで得た情報や意見を再度深く評価します。既存の考え方やフレームワークに囚われず、多角的な視点で情報を検討します。 - ブレインストーミングを実施
改めてチームや関連部門とブレインストーミングを設け、自由な発想でアイディアを出し合います。ここでのポイントは、すべてのアイディアを否定しないこと。話す前から現実的でないと判断せず、多くの選択肢を生み出すことを重視します。 - 新たな仮説を設定する
ヒアリングで得た情報や新しいアイディアを基に、新たな仮説や方針を設定します。この仮説は、次回のヒアリングや実験、プロトタイピングなどで検証されることとなります。 - 計画の見直しとアクションプランの作成
最後に、新しい仮説やアイディアを元に、事業計画や戦略を見直し、具体的なアクションプランを作成します。
新たな仮説やアイディアの模索は、事業展開や競合との差別化を図るための重要なステップです。サマリシートを最大限に活用し、新しい価値を創りましょう。
ヒアリングで押さえるべきポイント
ヒアリングを成功させるためのステップとして、方法や取り組み方でとくに気をつけたいポイントがあります。適切なヒアリングが行えれば、事業の方向性や市場のニーズ、さらには競合との差別化ポイントなど、貴重なインサイトを引き出すことができます。しかし、ヒアリングを仕損じてしまうと、真のニーズを見落としたり、事業を誤った方向に進めてしまうリスクもあります。
ですから、ヒアリングの質をより高めるために、再現性のある事前準備の重要性、対象者の本質的な声をしっかりとキャッチする方法、そして言葉だけでない非言語的な情報の収集方法などを中心に、成功のためのコツをお伝えします。
1. 再現性のあるヒアリングができるように事前準備を怠らない
ヒアリングは、いわば“真実の声”を探る貴重な手段です。ヒアリングの質を確保するためには、異なる対象者や状況で同じ質の高い情報を収集できるようヒアリング方法に「再現性」をもつことです。
それには事前準備が欠かせません。前述しましたが、ヒアリングの目的とゴールを設定して方向性を持たせた上、質問項目やヒアリングの流れをしっかりと計画。それをもとに台本やシートを用意し、どのヒアリングも一貫した内容となるよう努めます。さらに、ヒアリングを行う環境や設定、使用ツールや方法も統一し、外部の変数を最小限に抑えて再現性を保ちます。
事前準備を怠ると、その都度異なる結果が出ることが考えられ、比較や分析が難しくなる恐れがあります。真のニーズや市場の声を正確にキャッチするために、事前の準備の重要性を十分に理解し、しっかりと取り組みます。
2. 対象者に考えさせない
ヒアリングで最も重要なのは対象者の生の声や直感を引き出すことです。そのため、必要以上に考えこませてしまう質問や誘導的な問いかけは、対象者が自らの真の感情や考えから離れ、一般的な答えや無難な回答を引き出してしまう可能性が高くなります。
「対象者に考えさせない」とは、厳密に言うと、深く考えず、反射的に反応してもらうことを言います。「どう思いますか?」ではなく、「どう感じましたか?」「具体的なエピソードはありますか?」といったオープンエンクエッションを用いるとそういった回答を引き出しやすいです。
ヒアリング時の環境作りも重要です。リラックスできる雰囲気を作ることで、対象者は意見や感情を出しやすくなります。ヒアリングの実施者は、対象者が答えに困ったり、長く考える時間が生まれたと感じたら、質問を言い換えたり、内容の補足ができるとよりよいです。
3. 非言語的な反応もキャッチする
人が情報を伝えるとき、言葉以外にも、身体言語、顔の表情、声のトーンなどの非言語的な要素からも多くの情報が伝わります。ヒアリングにおいて、これらの非言語的な反応を無視することは、価値ある情報を見逃していると言ってもいいでしょう。
非言語的な反応は、対象者の真の感情や意見、隠れた懸念点を明らかにする手がかりにもなります。たとえば、肯定的な回答していても、身体が強張っていたり、声のトーンが低くなっていたりすると、その背後に不安や疑問をもっていることが考えられます。
ヒアリングを進める間、実施者は対象者の目の動きや手や足の動き、呼吸などを注意深く観察します。何か気づいたり、違和感を感じたら、関連する質問を追加して、深掘りできるとよいです。
非言語的な反応を正確に読み取るには、ヒアリングの経験を重ねたり、トレーニングが必要ですが、対象者としっかり向き合うことで、経験が少なくても少ないなりに読み取ることができます。臆せずにチャレンジしてみてください。
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